令和5年2月発行「令和3年度 人材確保コンサルティング好事例集」より抜粋
応募はあるが、設定していた採用基準に満たない方も多かった。さらに、採用してもすぐに退職してしまう状況が続いていた。
コンサルティングを受けることになったきっかけを教えてください
小川様工場責任者と製造の求人募集をしていたのですが、なかなか採用できず、また、採用してもすぐに辞めてしまうことが続いていました。いろいろと相談に乗っていただいていた、東京しごと財団の担当者にこのことを話したところ、いくつか人材採用に関連する事業をピックアップして紹介いただいたんですね。その中に今回のコンサルティングがあり、申し込んだのがきっかけです。
どのような指摘やアドバイスがありましたか?
小川様採用状況についてひと通りお伝えした後、コンサルタントから言われたのは、採用基準が高すぎるということでした。その当時の採用基準は、「3DCADが使えて、電気回路設計ができる人」です。どちらかの条件に絞っても求人市場に人が少ないのに、両方の条件を満たす人はなかなかいないですよと。もしいたとしても、引く手あまたな人材ですので、より好条件の企業に応募するはずですと、「優しく」指摘されました(笑)。
結局、即戦力にこだわりすぎていたのだと思います。即戦力として採用すると、私もそれなりに期待している分、「できていない」ところが気になり、ついつい厳しい目で見てしまう。振り返れば、それが早期退職にも繋がっていたのかもしれません。コンサルタントと話し合った結果、求人票には最低限必要なスキルだけを記載して、応募の間口を広げることにしました。足りないスキルや経験は、こちらもサポート環境をきちんと整えた上で、入社後に身に付けてもらう方針に切り替えました。
その後の取り組みと結果はいかがでしたか?
小川様まずは求人票を見直し、ハローワークで募集。同じタイミングで、改善した求人票と同じ内容を掲載した有料求人媒体で募集をかけました。結果的にハローワークから工場責任者1名(50代)、有料求人媒体から製造・設計職2名(20代・30代)を採用することができました。
いずれの方も、マネジメント経験が無かったり、電気の資格は持っているけどCADは使えなかったりと、以前の募集要件では採用が難しかった人たちです。でも、採用方針を変え、入社後の「のびしろ」に目を向けられたことで、良い採用ができたと思っています。工場責任者は真面目でとても人柄が良いので成長が楽しみですし、第二種電気工事士の資格を持っている社員は第一種電気工事士の資格取得に意欲的ですし、製造という新しい分野の仕事を楽しんでくれています。
さらに、習慣化しすぎて誰も気がつかなかった「非効率な業務」に対して、自作で資料まで作って業務改善の提案をしてくれるなど、若い世代が入ってきたことで確実に新しい風が吹き始めています。社員の高齢化も進んでいく中で、知らず知らずに我々の考え方が硬直化していたんですよね。正直、こちらが良い刺激をもらっています。
採用者へのフォローは行っていますか?
小川様もちろん、彼らが戦力になるまでの「教育」を前提として採用しているわけですから、我々には彼らをしっかりとバックアップする責任があります。そこは、採用方針を変えた時点でコンサルタントからも言われていたことです。ですので、ただ単に仕事を教えるのではなく、楽しみながら知識や技術が身に付けられるよう心がけています。
例えば当社では週に1回、「修理の日」を設けています。製造職の全員が集まって、故障した製品を修理するんですね。知っている人は知らない人に解説しながら、知らない人は知っている人に聞きながら、みんなでワイワイと、という感じです。製品はさまざまな部品・パーツと電気回路からできていますから、修理を重ねていくと、パーツごとの役割や製品が作動する仕組みが隅々までわかってくるんです。流れ作業で製品を作っているだけではなかなか頭の中で繋がってこないので、こうした場を設けて製品理解を深めています。和やかな場ですし、みんなが集まるので、親睦を深められるという意味で新人さんにも参加してもらっています。
また、営業や事務など他部署の社員たちとも仕事の接点を作ってコミュニケーションが取れるよう工夫するなど、社内全員でサポートしています。世代交代も含めて将来有望な人材ばかりですから、ぜひ「長く、楽しく」働いてもらいたいと願っています。
コンサルティングを通じて採用に対する意識の変化はありましたか?
小川様今回、コンサルティングを受ける中で、さまざまな調査データも拝見しました。10年前と今とではだいぶ働く目的や意識も変わっているんだなと、確認できたことも大きな気づきでした。若い世代が入社してきた中で、こうしたデータはとても参考になります。長く充実して働いてもらうために、こうした知識も活かしながら福利厚生や給与面なども改善していければと考えています。ありがとうございました。