セミナーレポート

中小企業採用力向上支援事業 
多様な人材活用セミナー

女性左官職人第1号を生んだ、原田左官工業所の社長が語る
人材育成と採用の秘訣

2020年2月19日に、中小企業採用力向上支援事業の多様な人材活用セミナー『女性左官職人第1号を生んだ、原田左官工業所の社長が語る 人材育成と採用の秘訣』を開催しました。

開催日時 2020年2月19日(水) 13:30~15:50
開催場所 御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター RoomC
講師 原田 宗亮 氏 有限会社原田左官工業所 代表取締役社長

左官業は「若い人が来ない」「女性が働くような仕事じゃない」と思われています。でも、うちはありがたいことに、若者や女性が毎年2〜3人入社し、着実に戦力となっています。最初からそうだったわけではありません。30年ほどかけて、だんだんと変わってきました。

原田左官工業所、女性活用の歴史

  • 1989年、女性左官職人が誕生(きっかけは女性事務スタッフの「私もやってみたい」の一言)
  • 白い漆喰に口紅やアイシャドウで色むらをつけるなど、女性の感性を生かした左官が話題に
  • 女性左官職人が増え、女性の左官チーム「ハラダサカンレディース」を結成
  • 女性更衣室を設置。若い男性からの要望で男性更衣室も設置。(若い男性のニーズを知る)
  • 女性左官職人の「出産しても左官を続けたい」の一言で、育児休暇制度を作成。
  • 2020年2月現在、現場の女性が11人、うちママ職人が2人。4月に2名入社する予定。
改革を進めた原田社長

左官業界では、高齢化、職人不足、仕事の減少、が大きな課題です。このままでは左官の仕事が世の中からなくなってしまうのではないか?!という危機感から、若者と女性が育ち、定着するための職人育成システムを作りました。

職人育成システム1:モデリング訓練

昔から職人は「仕事は盗むものだ、見て覚えろ」と言われてきました。それは正しいと思いますが、今の若い子は、いきなり現場に放り込まれても仕事を覚えるきっかけがつかめず、左官の仕事を知る前に辞めてしまう、ということがよくあります。そこで当時、左官業界の青年部長だった、札幌の中屋敷左官工業の社長が、スポーツ業界などで行われている育成方法「モデリング」を左官業界にも取り入れました。
うちで行っている「モデリング訓練」は、左官名人のお手本動画を見て、手順や手数など細かい動きまで完全にコピーする、というものです。本人がやっているところもビデオに撮り、お手本動画とどこが違うか、本人に気づかせて言わせて修正させます。この繰り返しを約1ヵ月間行います。この訓練によって、現場でも「見て覚える」感覚をつかめる子が増えました。

職人育成システム2:年明け披露会

入社4年後に、1人前の職人になったことをお披露目する会として「年明け披露会」を行っています。「年明け」は「年季が明ける」という意味です。今後、仕事で心が折れそうになっても、会社や先輩たちがお祝いしてくれたことを思い出し、踏みとどまってもらいたいという思いから、家族も呼んで本人が恥ずかしがるくらい盛大なセレモニーとして行います。
職人の仕事は一生修行だと言われますが、入ったばかりの子に一生というゴールは長すぎます。まずは見習い工を卒業し、職人1年生になる「4年後」をゴールとすることで、後輩たちにも目標となります。ほかの職人たちにとっても「1人の職人を会社全体で育て上げた」という一体感が生まれ、今では職人たちのほうから進んで企画を持ち込んでくれています。

職人育成システム3:ブラザーシスター制度

見習い全員に対し、2〜3人の職人がブラザー・シスターとなり、定期的に飲み会をしています。この飲み会では「見習いの悩みを聞く」というところに重きを置いています。特に、仕事を辞める原因になりやすい人間関係についての悩みは必ず聞いてもらい、会社として対策をとるようにしています。

世代間ギャップの埋め方

若手の採用が上手くいったことで、職人たちの年代が大きく2つに分かれました。60代は巨人の星世代。自分で苦労して勝ち得たタイプで、苦労話や根性論が好きな人が多いです。一方、30代はキャプテン翼世代。みんな仲良くというタイプで、教えてもらえないと動けない受け身な子が多いです。
モデリング訓練を始めたころ、60代のベテラン職人からかなり反発されました。でも、現場で先が読める、役に立つ若手が増えたことで、次第に協力してくれるようになりました。すると今度は、ベテラン職人が若手に教えすぎる、という事態が起こりました。そこでベテラン職人に「モノが豊富な時代にモノをあげても大事にしない。だから最初は教えないでほしい。彼らが助けてほしいと飛び込んできたら、ちょっとだけ教える。それで真剣だとわかったら1個ずつ教えてあげてほしい」と話し、若手には「昔は頼んでも誰も教えてくれなかった。今は頼めば先輩たちが何でも教えてくれる。こんなありがたいことはない。だから教わるときは真剣な態度で教わるように」と話しています。ベテランが若手の瞬発力を頼り、若手はベテランの経験・技術力・人との交渉力などを頼ることでパワーを発揮する、そんないい現場でいい仕事ができると、自然に会社の雰囲気もよくなります。

HPづくりで意識していること

会社HPの採用ページは、うちが採りたい20〜30代の人を全面に出し、訓練内容を細かく紹介しています。ゼロからでも大丈夫という安心感を与え、自分がそこで働くことが想像できるようなつくりを意識しています。給料の金額は出しません。うちは会社の中で成長し、成長の過程で給料も上がるため、すぐに稼げるわけではありません。ですから、給料が第一条件の人はミスマッチとなります。給料ではなく、雰囲気や仕事に魅力を感じた人に来てほしいと思っています。

SNSの役割

SNSはチラシのようなもの、安いからどんどん配れますが、ちゃんと見てもらえるかはわかりません。でも配っていれば、何万人かに1人でも左官をやりたいという変わり者が応募してくれるかもしれません。募集の時期は特に「今日こんな訓練をしました」「こんな人が活躍しています」「こんな職種を募集しています」など、FacebookやTwitterに数多く出すようにしています。実際ここ3年で、鹿児島や石垣島などの遠方からSNSをきっかけに入社してくる若い子が増えました。

事務局より

今回は、文京区千駄木にある原田左官工業所の原田社長にお話いただきました。穏やかな雰囲気の原田社長ですが、自らが見て聞いて学んで新しい職人育成システムを作り、ベテラン職人からの反発にも真摯に向き合うなど、強い信念と会社への深い愛情を感じました。今後は、新しく設立した訓練校を軸に、さらなる若手育成を考えられているとのこと。原田左官工業の経営理念の通り、「夢とロマン」を持って仕事をされている原田社長から、大切なことを改めて気づかせていただきました。

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